事例紹介
全社管理職・担当者生産性向上
ナレッジワーカーの位置づけ
図1;組織階層と業務のウェート
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図2;ナレッジワーカーの位置づけ
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解説
弊社では、管理職、及び、その部下である担当者を「ナレッジワーカー(KW;knowledge worker)」と定義しております。しかし、ナレッジワーカーと言う言葉は定着しておらず、国内においては上位層のホワイトカラーと表現する方がイメージできる人は多いかもしれません。A トフラーやP ドラッカーが成熟国においては労働集約的業務ではなく知的労働業務こそが競争優位に寄与すると過去に発信してきましたが、現在の日本はその環境へシフトしています。ホワイトカラー(WC;white collar;管理・間接部門)やブルーカラー(BC;blue collar;作業者)における日本企業のコスト競争力は、BRICSへの移転や雇用形態を変えることによって戦う土俵を譲っています。
一方で米国は企業間競争の結果、製造業では日本にその国際的な優位的立場を譲ったものの、逆にそれが米国のナレッジワーカーの競争力を更に強くしました。実際に米国では物理的に現地でないと対応できない業務以外はコストの安い海外へシフトさせています。つまり本国に残っている人材は競争力のある人材だけが残っている形になっている。そんな彼らはモノづくりではなくコトづくり、つまり、ものすごく付加価値の高い業務だけに従事している傾向が強くなってきております。
弊社代表の坂本は、米国のナレッジワーカー・ホワイトカラー生産性向上研究団体(ISPI;international society for performance improvement;1962年設立)と深い交流があり2003年~2011年までISPI;日本支部のプレジデントも務め、先駆けて知識労働者(ナレッジワーカー)の生産性向上研究を深めてまいりました。ナレッジワーカーの生産性向上こそが次の時代における企業経営の競争優位に寄与できるものと思われます。
化学品製造H社
製造部門の工場における生産性を向上させ、飛躍的に収益性向上を実現した後、本社の管理・間接、及び、営業部門における管理職以下の人材の生産性向上にメスを入れたいとのこと。そもそもの仮説は、働き方を見直すためにはルールの制定や仕組みの導入も必要だが、それ以前に業務の中身を精査することの方が遠回りのように見えて安定的に効果が見えるのではないかという責任者の関心がキッカケ。それと、工場の生産性向上とは業務内容が異なり、どこまで測定ベースのマネジメントが実践できるのか? ということも関心の一つ。
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担当者;管理部門統括責任者
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売上規模;約500億
提案
「図2;ナレッジワーカーの位置づけ」にあるように、階層が上位になればなるほど業務内容が「量的な業務から質的な業務」へシフトされます。つまり、量的な業務は効率性向上を期待され質的な業務は効果性向上が期待されます。この同時達成こそが生産性向上の実現につながると考えます。
図3;生産性=効果性×効率性
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言葉の定義;英語では効果性をeffectiveness、効率性をefficiencyと表現する。尚、日本語では効率性と同様能率性という言葉も使用するがどちらもefficiencyで同じ意味である。
企業の業績を向上させるためには、ナレッジワーカーである従業員一人ひとりの時間という経営資源を出来るだけBF;基本機能に投入させるようにマネジメントすることが期待されます。業績は向上するのではなく、向上させないと向上しないものであり、つまり、意識しないと期待する結果は導けません。
図4;生産性向上分解式
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human performance & productivity technology modelに沿って、まず収益性可能性分析を実施し、生産性向上プロジェクトによる結果、導かれる「収益性向上可能性調査結果」に基づいて責任者の判断の元、生産性向上ステージへコマを進めました。弊社では、生産性を「プロセス(process)×パフォーマンス(performance)×ユーティライぜーション(utilization)」に分解して構造改革を推進させていきます。
図5;業績向上推進技術;BF(basic function;基本機能)/AF(auxiliary function;補助機能)
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しかし、ナレッジワーカーとして期待されている業務はTPM(total productivity monitoring;思考業務)が中心であることを忘れてはいけませんし、一方で、いたずらにTPMを回避してもいけません。TPM業務に携わらない(or 能力的に携われない)ということは、必然的にナレッジワーカーではないと定義できます。つまり、ナレッジワーカーの業務改革は、TPMの基本機能、そして、OPM(operational productivity monitoring;処理業務)の基本機能・・・ というようにTPMを中心にデザインしていくことによって図5のように革新的な改革効果が期待できます。
ただ、実際の現場ではTPMの成果が創出されていない場合は多々あります。その理由は本人による場合もあれば会社による場合もあります。しかし、理由はどうであれTPMの成果が計画通り創出されていない場合、非常に高い確率で業績も創出されていないこと、もしくは、創出される業績の計画に対するバラツキが多いもの事実です。
TPMが創出できない原因が会社にある場合は別途全社的に対策を考えるとして、本人に原因がある場合は管理者が正しくメンバーをマネジメントができていなかったと言えます。
原因が本人にある場合、TPMに従事しない(or したくない?)という現実から前もって逃避させないようにマネジメントしなければいけません。その為にそのようなメンバーの時間という経営資源配分状況、及び、TPMの品質状況を事前に察知する必要があります。
つまり、TPMを上手く創出できていないその原因は大きく二つ考えられます。一つはそもそも能力がない場合。これを監査する技術がMBM(monitoring based management)。
図6;業績向上監査技術;MBM;monitoring based management
【考え方;TPI(total performance index) = TPMとOPMの生産性指標を生産性指数に変換したもの】
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ナレッジワーカーに期待されている最重要業務はTPMであり、管理者はメンバーのTPMに関するquality control(効果性向上)が期待されている。しかし、実際は処理的な業務であるOPM(効率性向上)とのバランスさせる必要があり、TPMとOPMの生産性指標をTPI(生産性指数)に変換することによって、管理可能なTPMとOPMの生産性が向上しているのかを監査します。
TPMを上手く創出できていないもう一つの原因が、就業時間内で計画的に正しくTPMへ時間を投入できていない場合。これを監査する技術がHQM(human quality monitoring)。
図7;就業環境監査技術;HQM;human quality monitoring
【公式;HQM = TPM × (就業時間 - TPM)2】(この”2”は、二乗という意味)
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改革対象組織におけるHQMのあるべき代表値(3点見積もり法により算出)に対して、実際のHQMがどの程度バラついているのかを監査することによって就業時間内におけるTPMに対する緊張感が見えます。
ナレッジワーカーの生産性向上に関する理論は多く出版されているものの、運用する技術、つまり測定技術に関してはまだまだ研究が期待されるところです。これらの測定数値が具体的な改善案の立案につながります。